第69章

「鈴木!」

葵は目を血走らせて彼を抱きとめようと手を伸ばしたが、その手に残ったのは生温かい鮮血だけだった。

和也の反応は早かった。瞬時に照明を消し、その勢いで葵を窓辺の死角へと押し倒す。

「スナイパーだ! 向かいの屋上!」

春はすでにドアへ駆け寄り、裏手で病室の鍵を完全にロックした。その顔は青ざめている。

「クソッ、ここは中央病院だぞ!」

暗闇の中、鈴木の呼吸は浅く、そして弱々しくなっていく。彼は葵の袖を死に物狂いで握りしめた。

「逃げ……ろ……」

彼は最後の力を振り絞り、葵の掌に歪なアルファベットを一文字書き残した。

『S』

直後、老人の手は力なく落ち、二度と動くことは...

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